寂しい「本物の舞」

島根県・浜田市 2014.11.12

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車の旅も時には体の負担になる。鉄道の旅も楽しいだろうし、バス旅行も視点が違って見えるだろう。しかし、計画の段階で車の便利さに負けてしまう。

大都市とは違い、日本海側の公共交通の旅は不便すぎる。地方は道路が整備され車社会が進む一方、少子高齢化、人口減の影響で公共交通の利便性はこの上なく悪い。時間に余裕があれば車に頼らない旅ができるのに、と思いつつ、いつも同じことを繰り返している。

中国山地を挟んで島根県や広島県では、秋祭りに豊作や豊漁に感謝して神楽が奉納される。古くから伝わる伝統芸能で、笛や太鼓に合わせて1着何百万円もするという豪華な衣装と面を着けて舞う。演目は30以上もあり、古事記や日本書紀を基にストーリーが作られている。

島根県石見地方も神楽が盛んな地で、130以上の団体がある。公演情報によれば、一年中各地で上演され、大都市や海外も含め、週末には定期的に見ることができる。

同県浜田市の今宮神社の秋祭りで、奉納神楽を撮影する機会を得た。案内によれば、午後8時から11時までの3時間。他では夜通しの神社もある.神社の境内には観客が30~40人いて、思っていたより少ない。舞殿ではスピード感ある舞が続く。大人より子どもや若い女性の笑い声が聞えて来て、楽しんでいる様子が心地いい。

それにしても観光客らしき人やアマチュアカメラマンが一人もいない。話によれば、週末の定期公演には多くの人が集まるが、本来の秋祭りはそうでもないらしい。神社の舞殿での本物の舞が寂しいのは、なんとも寂しいものだ。

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その時その時代を刻む

富山県・新湊大橋 2014.8.13

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昨年、世界文化遺産に登録された富士山ほど多くのカメラマンに撮影されている山は、世界でも少ないだろう。富士山は360度すべての方向から写真に収めることができることから、富士山を取り巻く市や町で毎年写真の公募展が開かれている。

富士山はどこから見てもあの末広がりの形で、写真の良しあしは、天候、時間、場所が物を言う。あとは長年の経験と技術が作品を作る。一度富士山の公募展を見たが、あまりにもきれいで本物より美しい姿が四季を通じで画面いっぱいに表現されていて、正直驚いた。

その足で山中湖畔の岡田紅陽写真美術館(山梨県忍野村)に出向き、展示されている大型白黒プリントの富士山が圧倒的な迫力で迎えてくれた。岡田の作品の前では、公募展で見た美しすぎる写真は雑誌で見る美しいモデルのようで、きれいだったという印象しか残らない。デジタル全盛の今の時代、今に残る名作の白黒写真を見る機会があれば、ぜひ見ておきたいものだ。

先日、射水市の富山新港の新湊大橋を見に行って来た。私の初めての個展のテーマが富山新港だったこともあり、懐かしい場所でもある。新聞やパンフレットで見る新湊大橋の写真は、立山をバックにしたり、海王丸を写し込んだものばかりで何か物足りない。

私は風景写真の中にもその時、その時代を写し込むよう考えながら撮影地に向かう。そんな車の中での思考も楽しい。今回は万葉線を手前に入れての撮影に始まり、越ノ潟と堀岡を結んだ渡し船、大岸の巨大な橋脚と工事中のクレーンを入れて撮影した。そのうちの1枚が今回の写真旅。

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めでたい大社で一枚

島根県・出雲大社 2014.6.11

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私が住む南砺市相倉の合掌造り集落は、世界中から多くの観光客を迎える。30年前には考えられなかったような高級一眼レフカメラを2台も携えた中高年女性からカメラ付きケータイまで、だれでも写真を撮れる時代になった。

私の民宿でも、撮影が目的のカメラ同好会、カルチャー教室の一行、カメラメーカーが後援しメーカー名を冠したクラブまで、写真関係のお客も種々様々である。私が写真を撮ることを知っている人たちがほとんどで、夜は写真談義に花が咲く。

先日も10人の写真クラブ一行が宿泊した。全員が酒を好み、食事中は囲炉裏を囲んで大いに盛り上がった。私も、客と宿主の立場を忘れるぐらい写真の話を楽しんだ。そのうちの1人が「今まで多くの撮影旅行に参加して写真の話をしてきたつもりだが、今日のように写真のことを熱烈に楽しく、各々の写真観を話したことはなかったのではないか」と話した。すると、ほかの数人もいつも出来上がった写真やカメラ機材の話題ばかりで撮影以前の話はなかったと同調した。

全国のアマチュア写真家と言われる多くの人たちは、目の前の被写体をどう撮るかにエネルギーを費やし、コンテストに入賞するような写真を狙う。しかし私が思うに、それでは本当の写真を撮る楽しみが失われているのではないか。本当の楽しみとは、自分の撮りたい写真、自分の見たい世界を写真の中に早く見つけることではないかと思う。

皆と同じスタイルではなく、カメラ1台、レンズ1本で写真を撮るぐらいの気迫と勇気を望みたい。写真は先日、高円宮典子さまとの婚約が内定し、めでたい話題に沸く島根県の出雲大社の大しめ縄と日の丸の旗。

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風力発電、未来を語る

青森県・竜飛岬 2014.5.14

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私は写真を撮りながら民宿を営んでいる。父が始めたもので、父が亡くなった後、切り盛りしていた母も年老いたため、50歳を過ぎてから二足のわらじを履き始めた。

住居でもあり民宿でもある合掌家屋が世界遺産に登録されたこともあり、世界中からお客を受け入れている。民宿は客とじかに接することが多く、囲炉裏を囲んでの会話は本音の声が聞ける。ストレスもあるが、それ以上に多くの人と接する楽しみがある。

先日もオーストリア・ウィーン在住の夫婦が2連泊し、五箇山を楽しんでもらった。ご主人がオーストリア人、奥さんは日本人で、会話に不自由はない。いろいろな話題の中で原発の話に及んだ。オーストリアは原子力発電所を1基建設したものの国民投票で反対が過半数を占め、廃炉になって現在も運転していないという。

日本では東日本大震災後、原発を含めたエネルギー問題が国の将来に向けた大きな課題となっている。しかしながら原発の再稼働に向けての話題が中心で、再生エネルギーの話題は少ないと感じている。風力も太陽光も少しは話題になるがあまり続かない。マスコミも低次元の話題ばかりで国の将来、未来のビジョンを語らない。

ヨーロッパでは日本の原発に大きな関心があり、原発廃炉となれば、大きな尊敬を得るだろうし、再稼働となれば失望し、今までのような信用は失ってしまうだろうと夫婦は語っていた。これは政治の話ではない。人々の日本に対する深く強い想いである。

夫婦の家では日本製のソーラーパネルで自家発電をしているとのこと。写真は青森県竜飛岬の風力発電群。

 

 

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白亜の建物 自然になじむ?

島根県・七類港 2014.4.9

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50年前、私は東京・銀座に勤め住んでいた。今も東京に行くことがあれば銀座周辺に宿を取る。銀座の街は中身は大きく変わってしまったが、古い建物も新しく建ったビルも尊重し合いうまく同居している。このような街は日本のどこにもないだろう。安心して歩ける街は楽しいし疲れない。
ヨーロッパの主要都市も映像で見る限りはケバケバしさはなく、落ち着いた歴史を感じることができる。何よりうらやましいのは外国の都市には広場がある。日本の街にも公園があるが、「ちょっと一息」の気楽さがない。都市も田舎も含め、美しい国、美しい田舎を作るのは国の責任、国民の責任である。
高度経済成長時、国道沿いに歴史や文化とはほど遠い国籍不明の建造物が乱立した。今、それらの建物にかつてのエネルギーや面影は見られない。
島根半島の東部日本海に面したリアス式海岸の一角に七類港がある。風光明媚(めいび)な七類港にある古くから交易が盛んな港で、今は隠岐の島行きの連絡船の出発港である。1995年、多目的施設として白亜のメテオプラザが建った。田舎の港にしては並外れて大きくデザインも異様である。連絡船出発時以外は人影もまばらで、建物の大きさに比べて利用者は少ない。白亜の建物がいつか自然環境になじむことがあるのだろうか。
日本は今、観光立国を目指そうとしている。そのためには日本の一番の売りである自然や文化、歴史、環境を壊さないことである。

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おやじについて

顔写真
池端 滋
いけはた しげる

1942年相倉生まれ
52歳まで東京と富山で
カメラマンとして生活
現在は妻と2人で民宿経営

写真集・連載・著書


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