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お知らせ・つぶやき

  • 2019.04.13
  • つぶやき
  • ここは、本州の袋小路 青森県・竜飛崎

2019年3月8日版掲載

半世紀以上前の村祭りや宴席では、酔うほどに老若男女が手拍子で五箇山民謡や演歌を声高に歌ったものだ。隣の酒好きのおじさんの十八番は春日八郎の「お富さん」と、城卓矢の「骨まで愛して」で、歌う姿は幸せいっぱいだった。

その後、高度経済成長時代、言葉も分からないまま絵画と同じようにあらゆる音楽が世界中から入ってきた。その多くは日本社会に根付き、生活や趣味の幅を広げ、世界を知るきっかけにもつながっていった。

私自身、今もジャズは日常的に聴いているし、ポルトガル生まれのファドも、一度はリスボンの酒場で生の歌声を聴きたいと思い続けている。英語もポルトガル語も理解できないが、曲を聴き、その国の人たちの心や文化に強くひかれる。

日本の演歌も人並みに聴いてきた。言葉が分かるから、菓子にも作詞者にも好きずきが生まれる。吉岡治氏の歌詞は、想像もつかない言葉でつながっていく。同じ言葉でも新鮮さが違う。石川さゆりの歌う「天城越え」も吉岡氏の作品だ。ほかのご当地演歌とは全く別の世界に引き込んでくれる。

青森県の竜飛崎漁港に太宰治の小説「津軽」の文学碑が建っている。「ここは、本州の袋小路だ。読者も銘肌(めいき)せよ・・・・・」と刻まれている。小説「津軽」が発表されたのは、1944(昭和19)年のことだ。

文学碑から少し離れた高台に、石川さゆりの代表曲の一つ「津軽海峡冬景色」の歌謡碑が、海峡を見下ろす殺風景な場所に、平成の風景を作っている。肌を刺すような風を受けながら、作詞家、阿久悠の世界を身をもって感じるのである。