お知らせ

お知らせ・つぶやき

  • 2018.09.30
  • つぶやき
  • 湖上に浮かぶ集落 滋賀県・沖島

2018年9月7日版掲載

私は日本海沿いを好んで旅する。山峡に生まれたことも影響しているのだろう。山里の生活は想像がつくが、海辺の生活は知らないことや分からないことも多い。おそらく大変なことも多いだろう。

滋賀県の琵琶湖に浮かぶ沖島は、日本で唯一の「淡水湖に浮かぶ有人島」だ。近江八幡市沖島町は人口約270人が暮らす。車も信号もない。島内の移動は三輪車が主で、島の外に出るには、日に12便の通船か個人の船で約10分。通勤、通学、通院、買い物に船で出かけることになる。

幼稚園、小学校は島内にあるが、中学校からはない。漁業が主な産業で、漁獲高は琵琶湖全体の半分を占めるというから、漁港の規模も大きい。

コンビニやスーパーがないからか、時間の流れが違う日常がある。わずかな平地に建物が密集しており、広場があれば、子供たちは走り回り、老若男女が話に花を咲かせている。住民同士のつながりは強く、都会の人たちには考えられないような信頼関係がある。裏を返せば知られたくないようなことまで知られてしまっているのかもしれないが。

集落の高台に奥津嶋神社がある。急な階段を昇ると、境内から眼下に集落の屋根が連なっている。路地も見えないぐらいだ。漁港の先に琵琶湖が広がる。大海の島と違うのは、琵琶湖の先に陸地の山並みが見えることだ。沖島案内パンフレットに、沖島訪問の皆様に八つのお願い書きがある。公衆トイレの利用、路地は静かに、ゴミはお持ち帰りを、歩きながらのタバコはご遠慮ください、などなど島民の生活を汚すことは許されない。源氏の落人が住み着いたことが始まりとされる島。私たちも学ぶことが多い歴史の島である。