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  • 2019.01.09
  • つぶやき
  • 安らぎ求める聖地 山形県・羽黒山

2018年11月2日版掲載

 

私の旅は晴れた日が多い。雨や雪の日もあるが、撮影目的だけは達成できているから、ツキはいい方だと思っている。

二十数年前、山形県羽黒山の国宝、東北最古の五重塔を訪れた。3月の寒い朝で、凍った石段を下る途中で足を滑らし、後頭部をしこたま打った。それから十数年後、豪雨と霧の中を羽黒山付近を走行中、誤って車の後部バンパーに大きなへこみを作ってしまった。この二つの出来事は忘れないでおきたい。

羽黒山は日本列島の中でも聖地中の聖地である。人々はいにしえより山海の恵みなど自然の恩恵に感謝しつつ、心の安らぎを求めてきた。羽黒山、月山、湯殿山の「出羽三山」の1400年の歴史の中で、人々は東北地方の厳しい自然環境を、山伏の修行場や山岳霊場の聖地として造り上げた。年月を重ねることで、過去、現在、未来の三山の地で、他では見られない独特の形が生まれた。

出羽三山山岳信仰の中心地、出羽三山神社の三神合祭殿は一年中参詣できる。月山、湯殿山は冬季は雪で閉ざされるが、羽黒山はいつでも車で行ける。山頂は大木に囲まれた森で、参詣者の集団が小さく見える。大きな鐘楼のその奥に、豪壮な本殿が現れる。高さ28㍍、周囲を圧倒する姿だ。日本一の茅葺き(かやぶき)屋根が信仰の深さを表している。正面の急な階段を昇ると、堂内は薄暗く、灯明が闇に浮かぶように光を放っている。

明治政府の神仏分離・廃仏毀釈によって、山岳霊場も様変わりしたが、出羽三山は今も変わらぬ深いエネルギーを秘める。その中で、現代の世界に何を伝えようとしてるのか、しばし考えた。