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  • 2020.11.19
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  • 密を楽しむ舞踏 福井市・五太子町
2020年11月7日版掲載 000003 新型コロナウイルスに関して日本は、海外の広がりから見れば低い水準で推移しているようだ。一番の感染防止策は、三密を避けるようにと言われている。東京の朝の通勤電車での感染が話題にならないのは、テレワークなど社会の仕組みが大きく変わっているからだと想像している。 一方、スポーツや演劇などで少しずつ入場者を増やしているのは、経営面の問題もあろうが、ファンとしてテレビで見るのと生で見聞きするのとでは、五感の違いが大きいからだろう。 1960年代の後半、「アングラ演劇」と称して、今まで見たこともない舞台が登場した。東京・新宿公園で、状況劇場を主宰する唐十郎(80)が紅テント公演を上演した。演目は「腰巻お仙」。当時マスコミや若者の間で話題になり、世間を驚かせたものだ。「唐に続け」とばかりに全国の若者が既成の演劇にはない方法で活動を始めた。 富山でも私の友人が毎夏、富山市の富山城址公園でテントを張り、自前の作品を上演し、保守的な富山の若者にも大いに刺激を与えたものだ。公演会場のテントの中には演じる者も見る者も手を伸ばせば届く距離。客同士は知人でなくても肩も膝も触れ合う密の世界だった。演者と客が五感を共有し、蜜を楽しんだ時代でもあった。 写真は福井市五太子町の山中での古民家であった舞踏公演。室伏鴻(1947~2015)が主宰する女性グループ「アリアドーネの会」と舞踏派「背火」との公演だ。煙にいぶされた古民家の空間で、最小限度の下着をつけて体全体を白いおしろいを塗った男女が、ジャズ演奏者、坂田明のサックスで揺れ動くさまは、夢のようだった。夜が明けた翌日の朝の光景が思い出される。