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  • 2019.10.20
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  • 歴史宿る「民家」の形 石川県・輪島市

2019年9月6日版掲載

暑かった夏も終わり、キリコ祭りで賑わった石川県・能登地方も少しずつ静けさを取り戻している頃だろう。

私が住む富山県・五箇山地方と能登は歴史的にも「落人伝説」や加賀藩とのつながりなど共通点も多く、獅子舞や民謡など文化面でも大きな影響を受けている。

五箇山の合掌造りも家屋も加賀藩の宮大工の仕事で、豪雪に耐えられよう高度な技術が施されている。日本を代表する伝統的建造物として評価され、ユネスコ世界遺産にも登録されている。

石川県輪島市内から国道249号を珠洲市方面へ車を走らすと、「白米千枚田」があり、棚田を撮影する。さらに先へ5分ほど進んで曽々木海岸を右折して約500メートルも行くと「上時国家」がある。国指定重要文化財で木造茅葺きとしては最大級で、建坪189坪(約623平方メートル)、大屋根の高さ18メートル、玄関は総けやきの唐破風造りで、築180年の堂々たる構えだ。

上時国家は約800年前、源平の合戦で平家一族が滅亡した際、平清盛の義弟、大納言平時忠が奥能登に配流となり、その地で没した。子の時国から始まる「時国家」は江戸時代には300石を統治する大庄屋で、苗字帯刀も許された実力者であった。日本海交易の北前船で財を成し、21代左門時輝が現在の屋敷を建て、今の当主は25代目という。

日本海に突き出た能登半島は大陸からのまつりごとや民族、文化の影響を色濃く受けた。加賀文化にも影響を与えたことだろう。私は、「民家」こそ島国日本の生活文化を代表するもので、その地でしか生まれない、他の地では見られないものであると思う。そして、後世に伝えるべき文化であり、芸術品であり、先祖からの最高の贈り物であると信じている。

上時国家の家紋「丸に揚羽蝶」は、平家の紋であり、五箇山最大の合掌造りで国の重要文化財にも指定されている「岩瀬家」の家紋でもある。能登との縁は深い。